当研究所では、田中敬一氏(株式会社二宝船舶社長)の援助により、1982年度からアジア諸国に留学生を派遣しております。田中氏は、若い留学生をアジア諸国に送り、仏教思想の源流を開明し、将来のわが国の文運に資することを念願としておられたことを、中村元前理事長宛ての書簡(1981年8月12日付)で述べておられます。アジア諸国への留学に関する限り、政府も財界も大教団もさほど力を入れていない現状を顧みるとき、この事業に協力できることに、関係者一同非常な感激をもって従事しております。
また2000年7月には、この制度をより恒久的なものとするために、京都にて田中敬一氏と松久保秀胤薬師寺管主(当時)と前田專學常務理事(当時)が相談し、2001年度から組織を変えることになりました。かつて田中氏が仏恩に報いるためにインドのバンダルカル東洋研究所に『大正新脩大蔵経』をご寄贈されるに当たって、1300年の歴史をもつ薬師寺に酬仏恩講が設けられ、現在まで存続しております。この酬仏恩講を事務局として、中村元東方研究所のアジア諸国へ留学生を派遣する制度を続けることになり、事務局の担当を松久保伽秀薬師寺本伽藍主任(当時)にお願いすることになりました。
派遣された留学生は、その留学の成果を、奈良の薬師寺、熊本の聖護寺、愛媛の瑞応寺などで発表しています。派遣者の人選と派遣の実務を委嘱されております当研究所は、例年厳正なる審査を通じて派遣者を決定し、現在まで約30回にわたって50名以上をすでに派遣しております。
当助成プログラムによる派遣研究者/留学生一覧
派遣者氏名 | 派遣時所属・肩書 | 派遣国 | 派遣内容 | 帰国年月 | |
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第35回 2024年度派遣 | |||||
56 | 大木 舞 | 京都大学大学院文学研究科・人文学連携研究者 | ネパール | ヴィシュヌ教文献とリッチャヴィ期碑刻文の読解およびチャング・ナーラーヤナ寺院における「あらゆる姿を持つ」ヴィシュヌ像と関連作例の調査 | 2024年9月 |
第34回 2023年度派遣 | |||||
55 | 佐々木一憲 | 立正大学法華経文化研究所特別所員 | インド ネパール | 東ヒマラヤの宗教文化における女神信仰の源泉の探求 | 2024年1月 |
※ 2020~2022年度 | |||||
新型コロナウイルスの世界的流行のため派遣事業を実施せず | |||||
第33回 2019年度派遣 | |||||
54 | 澤田 彰宏 | 拓殖大学非常勤講師 | インド | ヴリンダーヴァンでヒンドゥー教チャイタニヤ派のラーダーラマン寺院の組織と運営についての調査 | 2019年8月 |
第32回 2018年度派遣 | |||||
53 | 庄司 史生 | 立正大学仏教学部専任講師 | ネパール | ネパール・トリブヴァン大学にてネワール仏教の解明 | 2018年6月 |
第31回 2017年度派遣 | |||||
52 | 選抜者辞退 ※インド留学者が指定されたが、本人の急変した健康上の理由により辞退 →実施に至らず | ||||
第30回 2016年度派遣 | |||||
51 | 堤 博枝 | 東洋大学大学院生 | インド | インド・ラージャスターン州ウダイプル市州立博物館所蔵の細密画の原資料研究 | 2016年9月 |
第29回 2015年度派遣 | |||||
49 | 加納 和雄 | 高野山大学准教授 | 中国 | チベットに伝存する仏典のサンスクリット写本解読のための共同研究 | 2015年9月 |
50 | 青野 道彦 | 東京大学大学院特任研究員 | ミャンマー | ヤンゴン及びマンダレーにおけるビルマ第六結集版に関係する資料の調査 | 2015年12月 |
第28回 2014年度派遣 | |||||
48 | バルア・シャントゥ | 龍谷大学大学院生 | バングラディッシュ | バングラディッシュにおけるネオ・ブディスト(改宗新仏教徒)-オラオン部族コミュニティの社会宗教的民衆文化の研究- | 2014年8月 |
第27回 2010年度派遣 | |||||
47 | 鈴木 一馨 | 中村元東方研究所研究員 | 中国 | 福建省における風水空間形成の調査 | 2010年8月 |
第26回 2009年度派遣 | |||||
45 | 細野 邦子 | 中村元東方研究所研究員 | インド | First Asian Philosophy Congressで研究発表 | 2010年3月 |
46 | 佐々木 一憲 | 中村元東方研究所研究員 | インド | First Asian Philosophy Congressで研究発表ならびに現地調査 | 2010年3月 |
第25回 2007年度派遣 | |||||
44 | 目片 祥子 | 大谷大学大学院生 | 中国 | チベット自治区ラサ市の西蔵大学に、平成十九年九月から約一年間滞在し、サキャ派を中心としたチベット仏教の調査・研究に従事 | 2008年7月 |
第24回 2006年度派遣 | |||||
43 | 上野 敬子 | Ludwig-Maximilians-Universitat Munchen博士課程 | インド | ムンバイ大学ドイツ学科で平成19年2月19日から23日に開催されたInternational Conference on Translating Cultures:Intercultural Encounter between German Speaking Countries and India/Asiaに参加 | 2007年2月 |
第23回 2005年度派遣 | |||||
40 | 田辺 和子 | 中村元東方研究所研究員 | タイ | バンコク市ワットポー寺院にて、タイ所伝PaJJAsajAtaka翻訳についての研究及び調査 | 2005年10月 |
41 | 堀田 和義 | 東京大学大学院生 | インド | TattvapradIpikAの講読、および現代のジャイナ教教団に関する調査 | 2005年12月 |
42 | 立花 弥生 | 中村元東方研究所研究員 | インド | ナーランダー学会参加、および仏跡巡拝 | 2006年2月 |
第22回 2003年度派遣 | |||||
39 | 清水 晶子 | 中村元東方研究所研究員 | インド | デリーのジャイナ教寺院にて、ジャイナ教信徒の現地調査 | (2007年9月) |
第21回 2002年度派遣 | |||||
37 | 林 慶仁 | 中村元東方研究所研究員 | インド | デプン寺にて、インド内におけるチベット僧院の現況の研究 | 2002年11月 |
38 | 吉村 均 | 中村元東方研究所研究員 | ネパール | シェチェン寺にて、インド・ネパールにおけるチベット仏教の現状の研究 | 2003年4月 |
第20回 2001年度派遣 | |||||
36 | 仲宗根 充修 | 佛教大学大学院生 | スリランカ | スリランカ日本教育文化センターにて、初期仏教の研究 | 2002年4月 |
第19回 2000年度派遣 | |||||
34 | 釈 悟震 | 中村元東方研究所研究員 | スリランカ | 国立ルフナ大学にて、原始仏教の研究 | 2000年9月 |
35 | 藪内 聡子 | 東京大学大学院生 | スリランカ | 国立ルフナ大学にて、林住行者の研究 | 2000年9月 |
第18回 1999年度派遣 | |||||
32 | 清水 晶子(継続) | 中村元東方研究所研究員・ロンドン大学院博士課程在学 | インド | デリー大学にて、ジャイナ教の儀礼の研究(継続) | 1999年3月 |
33 | 及川 弘美 | 中村元東方研究所研究員 | インド | ヴリンダーヴァン研究所にて、クリシュナ信仰の研究 | 1999年10月 |
第17回 1998年度派遣 | |||||
31 | 清水 晶子 | 中村元東方研究所研究員・ロンドン大学院博士課程在学 | インド | デリー大学にて、ジャイナ教の儀礼の研究 | 1999年3月 |
第16回 1997年度派遣 | |||||
30 | 釈 悟震 | 中村元東方研究所研究員 | スリランカ | 国立ペラデニヤ大学にて、インド思想における仏教コスモロジーの研究 | 1997年8月 |
第15回 1996年度派遣 | |||||
29 | 茨田 通俊 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | プーナ大学にて、パーリ註釈文献に基づく仏教興起時代の思想研究 | 1997年3月 |
第14回 1995年度派遣 | |||||
28 | 該当者なし | ||||
第13回 1994年度派遣 | |||||
27 | 服部 育朗 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | プーナ大学にて、原始仏教思想の研究を修了 | 1996年7月 |
第12回 1993年度派遣 | |||||
26 | 渡辺 章悟 | 東洋大学講師 | インド | デリー大学にて、『般若経』の研究 | 1993年10月 |
第11回 1992年度派遣 | |||||
24 | 山口 務 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | プーナ大学にて、パーリ仏教の研究 | 1994年3月 |
25 | 小林 守 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | サールナート高等チべット学中央研究所にて、チベット中観思想の研究 | 1994年4月 |
第10回 1991年度派遣 | |||||
22 | 佐藤 裕之 | 日本学術振興会特別研究員 | インド | サンプールナーナンダ・サンスクリット大学にて、ヴェーダーンタ学派の認識論の研究 | 1994年1月 |
23 | 北川 清仁 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | ポンディシェリーセントラル大学にて、オーロビンド研究 | 1992年2月 |
第9回 1990年度派遣 | |||||
21 | 福士 慈稔 | 中村元東方研究所専任研究員 | 韓国 | 韓国精神文化研究院にて、三国仏教交渉史の研究 | 1990年11月 |
第8回 1989年度派遣 | |||||
20 | 及川 弘美 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | ヴリンダーヴァン研究所にて、クリシュナ信仰の研究 | 1989年10月 |
第7回 1988年度派遣 | |||||
19 | 辛嶋 静志 | 東京大学大学院生 | 中国 | 北京大学にて、漢訳仏教の研究 | 1992年3月 |
第6回 1987年度派遣 | |||||
18 | 遠藤 康 | 駒澤大学大学院生 | インド | プーナ大学にて、ヨーガ思想の研究 | 1991年6月 |
第5回 1986年度派遣 | |||||
17 | 関戸 法夫 | 立正大学大学院生 | インド | デリー大学にて、『法華経』を中心とした初期大乗仏教の研究 | 1991年7月 |
第4回 1985年度派遣 | |||||
14 | 菅野 博史 | 日本大学講師 | 中国 | 北京大学にて、中国仏教の研究 | 1985年9月 |
15 | 田中 裕子 | チベット文化研究所(インド・サールナート)研究員 | インド | ダラムサーラ・チベタンライブラリーにて、チベット仏教美術の研究 | 1987年9月 |
16 | 飯田 泰也 | チベット文化研究所研究員 | ネパール | ニンマ・インスティテュートにて、チベット禅の実習および研究 | 1986年12月 |
第3回 1984年度派遣 | |||||
11 | 佐藤 博隆 | 東京芸術大学研究生 | インド | デリー大学にて、仏教美術の研究 | 1987年7月 |
12 | 西川 高史 | 駒澤大学大学院生 | インド | サンプールナーナンダ・サンスクリット大学にて、大乗仏教の研究 | 1989年7月 |
13 | 藤井 正人 | 大阪大学大学院生 | インド | 南インドにて、ジャイミニーヤ派の伝承と仏教との関係について研究 | 1985年3月 (派遣期限) |
第2回 1983年度派遣 | |||||
7 | 田上 太秀 | 駒澤大学教授 | インド、パキスタン | 禅定、特に坐法(asana)の研究 | 1983年9月 |
8 | 西尾 秀生 | 立命館大学講師 | インド | マドラス大学にて、クリシュナ(Krishna)信仰の研究 | 1983年9月 |
9 | 清島 秀樹 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | デリー大学へ「Vakyapadiyaをめぐるインドの言語哲学」と題する Ph.D. 論文を提出 | 1984年3月 |
10 | 大橋 由紀夫 | 一橋大学大学院生 | インド | ラクナウ大学にて、インド天文学と仏教文化との研究 | 1985年6月 (派遣期限) |
第1回 1982年度派遣 | |||||
1 | 天野 宏英 | 比治山女子短期大学教授 | インド | デリー大学、ヴィシュヴァバーラティー大学(タゴール設立)で研究し、カルカッタのAsiatic Society of Bengal、National Library で古写経の検討。また、ナーガルジュナ大学で大乗仏教の研究 | 1982年9月 |
2 | 田辺 和子 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | デリー大学、ベナレス大学へ赴き、諸地方の仏蹟を探査 | 1983年 |
3 | 三友 量順 | 立正大学助教授 | インド | デリー大学に留学し、『法華経』を中心とした初期大乗仏教の研究 | 1984年12月 |
4 | 道林 信郎 | 中村元東方研究所専任研究員 | インド | マドラス大学に留学し、スレーシュヴァラを中心としたヴェーダーンタ哲学の研究 | 1983年12月 |
5 | 保坂 俊司 | デリー大学大学院生 | インド | デリー大学、パンジャービー大学に留学し、インド政治社会史、特にシーク教の研究 | 1984年6月 |
6 | 遠藤 敏一 | ケラニヤ大学(スリランカ)大学院生 | スリランカ | 原始仏教・パーリ仏教の研究 | 1987年12月 |